私の考える良いベースの音についてまとめてみました。いつにも増して、個人の考えです。
演奏シーンによって変わるのが当たり前な「良い音」の定義
ベースは低音担当の楽器ですが、低音だけでなく中域〜高域まで倍音が含まれています。ソロで弾くときは良かれと思っていた設定が、バンド演奏では思わぬ悪影響を及ぼすこともあります。またレコーディングにおいては、録音時に音を狙って作りすぎてしまうと、ミックスで思わぬ苦労をかけてしまう場合があります。ベースの演奏シーンにより、最良の音作りは異なるということを覚えておきましょう。
ソロプレイにおける良いベースサウンド
ソロプレイ、或いはベースが主役のバンドの場合は、自分が思う一番良いベースの音を好きに出すのが最善です。ドンシャリ(LOWとHIを強調しMIDを抑える)が好きならドンシャリにすればいいし、思い切り歪ませたり、何をやっても自由です。なんとなく、一人で弾くときはドンシャリが良い音に聴こえる気がするので好きです。ベースが主役のバンド演奏をする機会はそう多くないかもしれませんが、この場合もベースの音色は自由にやって、それを邪魔しないようにするのは周りの楽器の役だと考えます。
バンド演奏における良いベースサウンド
バンド演奏をする際には、ただ自分の好みの音を出すのがベストとは限らないと考えます。重要なのは、他の楽器との周波数帯域の「被り」の対処を考えることです。被りを減らすことをバンド全体が意識できれば各パートが分離して聴こえ、気持ちよく演奏できます。
まずは己を知る
ベースという楽器の周波数帯域なのですが、30hz〜4000hzくらいに幅広く分布しています。各帯域の特性をまとめました。
30-80hz | 低音の唸り |
80-200hz | いわゆる低音。ベースが美味しい部分。 |
200-600hz | ローミッド。カットするとドンシャリサウンド。ブーストで抜ける音。 |
600-1000hz | ハイミッド。ミドルを出すギターが美味しい部分。 |
1000−2000hz | 弦をはじいたときのパキパキ音が居る。ボーカル、スネアドラムのアタック音、バスドラムのビーターの音が居る。 |
2000hz- | キンキンいう音。スラップの打撃音 |
意識するポイント1:50-60hz
バスドラムの音は低音成分とビーターが当たるペチッという高音成分が主となります。バスドラムのチューニングにもよりますが、低音成分は50-60hzくらいのことが多いです。ベースも50-60hzは大きく出ますので、バスドラムと被る帯域をカットすることでバスドラムもベースもよく聴こえるようになります。バスドラムを叩いてもらいながら、イコライザを動かしてベースもバスドラムもよく聴こえるようなポイントを探してみることがバンド演奏時の音作りの第一歩です。
意識するポイント2:1000-2000hz
ここは「ボーカル」「ギター」「スネア」「バスドラ(アタック音)」など沢山の、しかも重要なサウンドが密集しています。バンドで聴かせたい音は何ですか?ボーカルが居るバンドなら、基本ボーカルがメインですよね。そこにベースががっつり周波数帯域を攻めてきたら、ボーカルが埋もれてしまいます。これではバンドサウンドが台無しです。私の場合は、バンド演奏するときはこの1000−2000hzは問答無用でたっぷりカットしてしまいます。
レコーディングにおけるいいベースサウンド
レコーディングならベースサウンドは加工する前提で
私の考えでは、レコーディング時のベストは音量補正目的のコンプレッサーをかけて、フラットなイコライジングにすることです。理由は、レコーディングされたベースサウンドは「加工される」ことが基本だからです。加工というのは、色々ありますが「イコライジング」「コンプレッサー」等による音質補正を指します。その過程で曲に合うベースサウンドを作っていくために「音量のバラツキがない」「音の味付けが少ない」ことが重要です。例えバンドの一発録りであったとしても、私なら可能な限り録った音を補正して音源としてのクオリティを上げることを考えます。
私はベースを録るならライン録りを推します
バンドマンの思考でよくあるのが「僕が作った音が最高なんだからそれをそのまま録音したい」だと思いますが、私はレコーディングの場合は「音は録った後で作った方が結果よくなる」という考えです。アンプから出る音をマイクで集音すると耳で聞くアンプの音とはけっこう変わってきたりしますし、ノイズも乗りやすかったりします。そういう理由もありレコーディングではベースの音をラインで録ることが主流です。ラインで録ったベースの音はベースの成分が漏れなく含まれているうえ加工しやすく、他の楽器とのバランスを整えやすいんですね。ベースアンプからの音もマイクで同時に録っておいて、それがもっとも良い音と判断されれば単体で使う場合もありますが、よくある使い方はラインの音と混ぜて音作りに使うというものです。
リアンプするならやっぱりフラットなライン録り
あと、やや高度なテクニックですが、「リアンプ」という技術を使う場合もフラットな音質でライン録りしておくと役立ちます。リアンプとはラインで録っておいたベースの音をアンプの入力音にしてアンプから音を出すというものです。こうすることで、ベストなテイクを使って後からアンプを使った音作りが好きなだけできるのが利点です。まあ、趣味でやるベースでリアンプする機会なんてそんなないですけどね。