ビジネス視点で見るバンド(前編):メンバー間コミュニケーションの重要性と戦略

ビジネスという言葉を聞くと、多くの人々は会社や企業を思い浮かべるでしょう。しかし、もし音楽をビジネスとして捉えた場合、どうなるでしょうか?特に、バンドはビジネス組織としての側面を持っています。一連の活動を計画し、それを実行するためには組織的な努力が必要となり、その中核にはコミュニケーションが存在します。今回の記事の前編では、バンドとそのメンバー間のコミュニケーションをビジネス視点から深掘りし、その重要性と効果的なコミュニケーションの方法について考察します。

1. バンドを組織として捉える

バンドは単に音楽を演奏する集団だけではなく、ビジネスの視点から見れば、特定の目標(音楽活動、CD販売、ライブ活動など)を達成するために結成された組織です。ここでいう「組織」とは、それぞれのメンバーが特定の役割を果たす構造体を指します。そしてこの役割は、単なる楽器演奏に限定されません。

企業の経営チームを思い浮かべてみましょう。CEOが全体のビジョンを持ち、それを他の役職に伝える役割を果たします。CFOは財務を管理し、COOは日々の業務を円滑に進めます。同じように、バンドもそれぞれのメンバーが特定の役割を担っていると考えられます。

バンドの中での役割は、音楽のパート(ボーカル、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーなど)だけでなく、広報活動やマーケティング、ブッキング(ライブやイベントの手配)、ファンとのコミュニケーション、商材の制作・管理、SNSやウェブサイトの更新といった業務も含まれます。例えば、一人のメンバーがソーシャルメディアの更新を担当し(デジタルマーケティングマネージャーのように)、別のメンバーがCDやグッズの制作・在庫管理を行う(商品マネージャーのように)など、それぞれのメンバーが独自の役割を果たすことが求められます。

つまり、バンドメンバーはただ音楽を演奏するだけでなく、一人ひとりが異なる役割を担い、その役割を果たすことで組織全体としての目標達成に寄与する、という視点が重要です。これはまさにビジネス組織の運営と同様のプロセスであり、この視点のあるやなしやによりバンドが商業的に成功できる確率は大きく違ってくると考えます。

こうした音楽のパート以外の役割をバンドメンバー自身が担えない場合、専門家(協力者)を見つける必要があるでしょう。

2. SWOT分析:組織としてのバンドの強みと弱み

企業経営において一般的なツールであるSWOT分析は、バンドにも適用可能です。SWOTはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取ったもので、これにより組織の現状と将来性を包括的に把握することができます。

バンドの強みと弱みは、メンバーの個々の技術や経験、チームとしての共演経験、曲作り能力などを見つめ直すことで明らかになります。機会と脅威は、音楽市場や文化的なトレンド、競合他バンドの動向などを考察することで理解することができます。

自分たちのバンドだけでなく取り巻く環境にも目を向け、どのポジショニングを目指すのか考えることが重要です。

3. バンドのビジョンとミッション

企業がビジョン(将来の理想像)とミッション(存在意義や目指すべき方向)を明確にして組織全体を一つの方向に導くように、バンドも同じ考え方を持つべきです。バンドが追求する音楽のスタイル、表現したいメッセージ、達成したい目標などを明確にすることで、バンド全体の行動が一致し、強固な組織を作ることができます。

全体の目指す方向性が定まれば、それを成功に必要な各分野の目標に落とし込み、さらにそれをメンバー個々の目標までブレイクダウンし、期限を設けて達成目標を定めます。これは企業で一般的に用いられる目標設定アプローチと全く同じです。

4. メンバー間のコミュニケーション

最後に、メンバー間のコミュニケーションは組織としてのバンドが機能するための基盤となります。対話によって誤解を解消し、共有すべき情報を伝達し、互いの意見を尊重することで、健全な組織文化を形成します。

バンドメンバー間のコミュニケーションは、ビジネスチーム内でのコミュニケーションと非常に似ています。明確な意思疎通、情報共有、相互理解と尊重は、バンドが一つの組織として機能するために不可欠な要素です。

後半へ続く

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